「い、一度も同じクラスにはなったことないけど、廊下で初めてすれ違った時に一目惚れして……。如月さんは気づいてないと思うけど、俺、会うたびに如月さんに惹かれていって……」
耳がかゆくなってしまうような告白を、名取くんは黙ったままのあたしに続けてくれた。
でも、それを聞けばなおさら、答えはこれしかない。
「ごめんなさい」
あたしは、しっかりとした口調で言って、頭を下げた。
「……え?」
顔をあげた瞬間に見えた名取くんは、目を丸くしていた。
「ごめんなさい。名取くんの気持ちは嬉しいけど、応えられません」
「で、でも、如月さん、今付き合ってる人とかいないんだよね……?」
震える声で聞かれてしまった。
たぶん、あたしが別れたあとすぐでも別の男と付き合うことで有名だから、まさか断られるとは思っていなかったんだろう。
でも、それは悪いけど大間違い。
こんなただれた恋愛ぱかりしてきたあたしだけど、それでもポリシーがあるんだ。
そのポリシーというのは、本気であたしのことを好きだと言ってくれた人とは、付き合わないということ。
これだけは、あたしの中で譲れない。