名取くんはそう言うと、突然あたしの手を引っ張り、走り出した。


名取くんの友達が名取くんに声援を送っている。


この声援に、“話があるから来て欲しい”という言葉、さらには心なしか赤く見える名取くんの顔。


「……」


そういうことか。


なんとなく、名取くんの話の内容は予想できた。


だから、あたしはある程度人気の少ない場所まで来ると、半ば無理矢理名取くんの手を振りほどき。


「もうここでいいよね?話って?」


そして、無理矢理本題を話すように促した。


名取くんは、しばらくおどおどとしていたけど、決意したのか、さまよわせていた視線をあたしにまっすぐ向けてくる。


「す、好きなんです!如月さんのことが!」


予想していた通りの言葉を口にした名取くん。


あたしは、しばらくじっと名取くんを見つめる。


顔はさっきよりも赤くなっていて、一度合わせてくれたはずの目もすっかり地面に落ちている。
口元は震えていて、両手は前で組んだり服を掴んだり落ち着きがなかった。


これは、“本気”のほうのか……。


自分で言うのも恥ずかしいけど、あたしのことを本気で好いてくれているように感じた。