その授業のあとの休み時間。


あたしはお礼を言いたかったのに、再び友達に取り囲まれてしまった。


今度は男子までいるから、嫌な予感しかしない。


「さっきの有明くん、超かっこよかったねー!」


「なんか、朔乃を助けたみたいだったな!」


助けてもらったのは事実だけど、それだけで何でそんなに騒ぎ立てるんだ。


幸い、トイレにでも行っているのか、陽がこの場にいないことに安心した。


だって、たぶんクラスのみんなはしょうもないことしか考えていない。


「もしかしたらさ、有明くんって朔乃のこと好きだったりするんじゃないのー?」


キャーッと何故か楽しそうな女子たち。


たぶん、地味で有名な陽とチャラくて有名なあたしが、カップルにでもなれば面白いから、さっきのことだけで、こんなにもはしゃげるのだろう。


「何言ってんの。みんなもこの前見たでしょ、陽が好きなのは天川さんなの」


「確かに天川さんのことを今は好きかもしれないけど、この先どうなるかなんてわかんないわよ?」


「そうそう。隣の席になってから、朔乃の魅力に気付くかもしんねーし」


いやいや、ありえない。
だって、陽は誰がどう見ても天川さんしか見えていない。


まったく話したことのないあたしに、いきなり“先生”になってと言ってくるぐらいなんだから。