あたしがその心に入る隙間はあるのか。陽に新しい恋へ進もうという気持ちはあるのか。
そんなことを、あろうことか試合中にぼんやりと考えてしまっていたあたしは。
「朔乃!」
クラスメイトに名前を呼ばれた時には、すでに遅し。
――バンッ!
「ぐふっ!?」
今まで発したことのないような声が、あたしの口から漏れた。
その原因は……顔面にボールが吸い込まれるように飛んできたせい。
まあ、もちろんのこと痛い。
「朔乃ー!」
「如月!大丈夫か!?」
クラスメイトたちが、顔面を押さえてうずくまるあたしの周りに集まってきた。
「朔乃先生……」
「平気平気……」
大丈夫は大丈夫なんだけど、これはたぶん鼻血が出てる。
ギャルみたいな風貌のあたしが鼻血を流しているなんて、こんなにおかしい状況はなかなかない。
恥ずかしいし、いつまでも試合を中断させるわけにはいかないので、あたしは星奈に連れ添ってもらいながら急いで保健室へ向かった。