あたしのことが好きだったのなら、この子もきっとあたしの噂を知っているはずだ。
だから、イマイチあたしに“好きな人”が居るという感覚がよくわからないのだろう。
そりゃそうだよね。あたしだって、まさかこうなるなんて思ってなかったんだもん。
でも、そうなってしまったんだから、仕方ないよね。
あたしはもう一度丁寧に頭を下げて、静かに言った。
「本気で誰かを好きになることを知ったの。だから……ごめんなさい」
あたしはそれから頭を上げ、鼻をすすりながら涙目になっている後輩くんに笑いかけた。
「ありがとう。好きだって言ってくれて、嬉しかったよ」
優しく声をかけながら微笑むと、後輩くんも涙でぐしゃぐしゃになりながらも釣られるように笑ってくれて。
「如月先輩の恋っ……応援してますからっ……」
ずびずびと鼻水をすすってあたしを鼓舞してくれると、後輩くんはまた清々しそうに笑って歩いていった。