別に、隠れるほどのことじゃないはずなんだけど、今はとにかくお母さんと顔を合わせるのが嫌だった。


それにしても、陽は何がしたいんだろう?
お母さんに用があるみたいだけど、名乗って挨拶までして……。


ひとりで考えを巡らせていると、先に口を開いたのは陽だった。


「朔乃さんのお母さん、単刀直入に言います。
再婚するのは一旦待ってください」


えっ!? 陽ってば、何を言ってるの!?


後ろから陽の顔を見上げるけど、もちろん冗談なんか言っている様子はなく、真剣そのもの。


一方お母さんのほうは、唐突すぎる話題にポカンと口を開けて驚いている。隣の海星も困惑よりも驚きのほうが勝っているような表情だ。


まず、陽がいるという状況にも飲み込めていない2人に構うことなく、陽は毅然とした態度で続けた。


「朔乃さんから話を聞いたんです。部外者である僕が口を挟むことではないのは承知していますが、朔乃さんの受験の日に再婚なんて少し酷ではないでしょうか」