「朔乃、おかえりなさい」
キッチンのほうからお母さんの明るい声が飛んでくる。
「おかえりじゃないわよ。どういうこと?何でこの人がいるのよ!」
掴みかかりそうな勢いでお母さんに詰め寄る。
あたしの剣幕にお母さんは少し戸惑いながらも、「朔乃」と、なだめるように名前を呼んできた。
「あのね、朔乃。大事な話があるの。座って」
お母さんは、あたしの手を引いてダイニングテーブルに座らせる。
すると、ソファーに座っていた海星もあたしの向かいに座ってきた。
「この前はごめんね」
叱ったことを謝っているのか、笑ったことを謝っているのかわからないけど、海星の話なんて聞きたくないあたしは目も合わさない。
すると、お母さんが控えめに“大事な話”を切り出した。
「新年早々、朔乃はこんな話したくないかもしれないけど、私たちも新しい生活を迎えることになるから」