「朔乃ちゃん」


「うるさいな。何なのよ、あんた!」


怒りが込み上げてきたあたしは、海星に掴みかかろうと来た道を戻ろうとしたけど。


――ピンポン。


改札を通りきっていたあたしは、ICカードも切符も通さずに戻ろうとしたせいで、改札が閉じ、海星のいる向こう側に行くことができなかった。


「うおわっ!?」


「ぶふっ!」


思わず驚いて声をあげるあたしと同時に、後ろで一部始終を見ていた陽が、あたしのあまりにも間抜けな行動に堪えきれず噴いた。


「ふふっ」


「あはははっ」


「……っ!」


陽だけでなく、あたしを叱っていたはずの海星やお母さんまでもが、あたしの姿を見て笑う。


何なのよ、むかつくー!


怒りに、さらに恥ずかしさまで加わり、あたしの顔が熱くなっていくのがわかった。


「帰る!!」


いたたまれなくなったあたしは、改札を戻り通ることはやめ、怒り任せに足音を鳴らしながらホームまで走っていった。