「あたしは陽の“先生”だから」





駆け抜けていく廊下に、人はもうまばらにしかいない。


文化祭の終わりが近づいている証拠だ。


一度自分たちの教室に戻ると、みんながあたしのことを心配してくれたから、また涙が出そうになったけど泣いている暇なんてない。


あたしは陽を最後まで見送らないと。


でも、天川さんのクラスに彼女はいなかった。


なんとなく、胸騒ぎというか嫌な予感がして、あたしは「7組に行ってみよう」と陽に言い、今こうして7組の教室へと向かっている。


この嫌な予感というのが具体的に何を示しているのかは自分でもわからないけど、なんとなく当たらないで欲しいと思った。


「あっ……いたかも」


前を走っていた陽が、走るスピードを緩める。


「天川さん?7組にいるの?」


7組の教室の少し手前で、陽は足を止め、あたしを振り返り頷いた。