あたしが泣き止むまで、大宙くんは黙ってそばにいてくれた。


天川さんに少しの罪悪感を覚えるけど、文化祭では陽を取られてしまうのだから、これぐらいいいやと思うことにした。


「……如月。お前の好きな奴って、有明だったんだな」


あたしが落ち着いたのを見計らって、大宙くんがぽつりとつぶやいた。


何で、と思ったけど、さっきのあたしを見たらさすがにわかってしまうだろう。


本当に陽の“先生”だけなら、あそこまで必死にはならない。
別の感情があったからこそ、涙まで出てきてしまったんだ。


「……まあね」


今更隠す必要もないかと思って、素直に答えた。


「馬鹿だろ、お前。俺が如月の立場なら耐えらんねぇ」


「ははっ、自分でもそう思う」


でも、気づいた時にはもう遅かったんだから、仕方ない。
ダメだってわかっていても抗えない。


だから、恋に“落ちる”なんて言い方をするんだ。