ぽろり、と思わず涙がこぼれ出た。
「お願い……します……」
結果が見えているから、“先生”としてあたしができることは、もうこれぐらいしかない。
だったら、陽の恋敵にだって、頭を下げる。
「如月……」
大宙くんは、突然泣き出したあたしに驚いたのか、目を丸くして動揺している。
しばらくうろたえたあと、頭をぐしゃぐしゃと掻き回し。
「あーもう!わーったよ!」
そう言ってくれた。
「わかったから、もう泣くな!」
「大宙くん……ありがとうっ……」
普通は、本当だったら、ライバルに先を越されるなんて嫌なはず。自分が誰より先に告白して、文化祭を満喫したいはず。
だけど、大宙くんは、それでも陽に譲ってくれた。
天川さんは、こういう大宙くんの隠れた優しさをたくさん知っていて、だから好きになったんだ。
本当にありがとう、大宙くん。