天川さんも、友達と一緒にこのお祭りに来ていたらしいのだけど、この人混みのせいで友達とはぐれてしまったんだとか。
「もしかしたら神社の方にいるかもしれないから、探してくるね。じゃあね」
天川さんは苦笑してそう言うと、カランコロンと下駄を鳴らして歩いていく。
大丈夫なのかな……。こんなところで、あんな可愛い女の子がひとりでいれば、変な輩に絡まれそうだ。
いや、あたしには関係ない。
今日は自分の恋の為にここに来たわけで。わざわざその恋敵と行動を共にするなんて、そんな馬鹿なことしたところであたしには何の得にもならないんだから。
そう、自分に言い聞かせたけど……。
隣を見れば、彼女の後ろ姿を熱のこもった目で見送る陽。
悔しくて仕方がない。
あたしの浴衣姿には、さらりと平気で素敵だなんて言えちゃうくせに、天川さんには、顔を真っ赤にして似合うと伝えるだけで精一杯なんだから。