「でも、最終的に振られちゃったら、頑張った分だけ有明くんは傷つくんだよ?」


……そうだ。星奈の言う通り。


「だったら、早めに諦めさせてあげたほうが有明くんの為だと思うよ、私は」


星奈の言葉は、あたしの心に重く響く。


そうなんだよね。傷つくのは、あたしじゃなくて陽なんだから。それはわかってるつもり。


でも、あたしは陽の“先生”だ。
諦めさせろなんて、あまり言いたくない。
だから、大宙くんが突っかかって来た時も、彼の存在すら話さなかったんだから。


うーんと唸り声をあげて悩むあたしの頭を、星奈はなだめるように撫でてくれた。


「朔乃は大丈夫なの?」


「え?」


「好きな人の恋を応援するなんてさ、私にはできないから」


星奈の優しい声が心地いい。
あたしを気遣ってくれているのがわかる。



「正直つらいけど、仕方ないよ。あたしは、天川さんをまっすぐに想う陽に惹かれたんだから」