「ありがとう、陽」
本当に……ありがとう。
涙が浮かんできて視界を歪ませる。
声が震えないように言うと、陽はホッとしたのか明るい声で「どういたしまして」と答えた。
「あのね、陽」
〈? はい〉
携帯を握る左手に力を込める。
あたしは、決意表明をした。
陽は、なんて言うのかな。
「あたし、K大を受ける。陽と同じ学校の、教育学部にする」
きっと、学部は違うだろうけど、陽が導いてくれた道を、陽と同じ場所で進みたい。
〈そうなんですか、決まってよかったですね〉
「うん」
陽はそう言ってから、電話の向こうから精一杯のエールをくれた。
〈朔乃先生なら絶対大丈夫です!一緒に頑張りましょう!〉
頑張って、でもなく。お互い、でもなく。
“一緒に頑張ろう”……。
好きな人にそう言ってもらえるなんて、あたしはなんて幸せ者なんだろう。
たとえ、好きだと言ってもらえなくても、あたしは充分満たされた気分だった。