こんな時だったせいもあるのかわからないけど、いつもより温かく、いつもより優しく心に沁みていくように感じる声だった。
「陽、どうしたの?」
〈いや、これといって用があったわけではないんですが、メールでの朔乃先生の様子が気になっちゃって……〉
「え?」
あたしが聞き返すと、陽は照れくさそうにもごもごと口ごもらせたあと。
〈志望校のこと、ひとりで悩んでしまって決められないなら、僕でよければ相談に乗りたいと思って、電話をかけてみたんです〉
そう優しく言ってくれた陽。
お母さんじゃないけど、あたしが悩んでいることを察して、声をかけてくれる人がここにいた。こんなにも身近にいたことに感動を覚える。
電話の向こうにいる陽の、いつもの優しい顔を思い出して、自然と笑みがこぼれた。