応援席のほうを見ると、後ろのほうでジャンプしながらあたしに手を振る陽の姿が確かにあった。
頑張ってって、言ってくれた。
天川さんじゃなくて、あたしに。
頑張ってって……。
「……まっかせなさい」
小さくつぶやいたあたしは、しっかりとバトンを受け取ると、全身の力を振り絞って一気に駆け出した。
何も考えずに一心不乱に風を切る。
1人抜いて、また1人追い抜いて。
あとは……天川さんだけ!
だけど、ゴールまではあと50メートルもない。
手を伸ばせば届きそう。あともう少しなのに。
やっぱりアンカーに選ばれるだけあって、天川さんはなかなか足が速い。
可愛くておしとやかで女の子らしいのにスポーツも得意なんて、あたしは彼女の足元にも及ばない。
悔しい……悔しい……。
負けたくないよ……。