ここまで差をつけられたら、1位になるのは無理。誰もがそう思うかもしれない。


でもあたしは、不思議と落ち着いていて、それでいて自信に満ち溢れていた。


「大丈夫。絶対追い抜いてみせるから」


背中をポンと叩いて励まし、コースに立つ。


第三走者の人の頑張りのおかげで、6人中ビリだったのが4位まで上がっていて、1位の天川さんのクラスとも少しだけ距離が縮まっていた。


それを見て、一瞬は沈んでしまった2組の応援席も、また大きな声援で盛り上がり始める。


天川さんへとバトンが渡り、2位のクラスにもバトンが渡り、走り出す。


「朔乃っ……あとは任せたよ!」


あたしのもとにも、黄色のバトンが渡ってきた。


手を後ろに伸ばしたまま軽く走り出した時に、誰かのあたしの名前を叫ぶ声が耳に届いた。



「朔乃先生ーーーっ!!! 頑張れぇぇーーーっ!!!」



少し震えた、低すぎず高すぎない声。


この声……この呼び方……。


あたしのことを“先生”と呼ぶのは、あの人しかいない。