「なるほど。それで背中を押してあげたのね」
星奈はため息混じりにそう言うと、あたしの頭をぽんぽんと叩くように撫でてきた。
「泣きそうな顔、してるくせに」
そうだよ。泣きそうだよ、あたし。
あんなこと偉そうに言ったけど、本当は、陽の“好きな人”として、あたしを選んで欲しかった。
手を繋いで、一緒にゴールテープを切りたかった。
そんなことは絶対ないんだって、最初からわかってるけど……。
〈有明選手、ゴォーーールゥゥーーー!!〉
陽が天川さんと共に無事ゴールした。
何かが吹っ切れたような、清々しい笑顔で。
陽が好きなのは天川さん。
あたしをその恋を成就させるキューピッド。
わかっていたことだけど、陽のあんな笑顔を見ると、胸が張り裂けそうになってしまうんだ……。