もう他の選手たちはすでにゴールしていて、陽はビリ確定。
だけど、陽はそれでも構うことなく、天川さんの手を引いてコースを駆け抜けていく。
「朔乃……。あ、有明くんの借り物って、天川さんだったの?」
星奈が少し聞きづらそうに言ってきた。
あたしは、それに苦笑して頷いた。
「たぶんだけど、陽の借り物は……“好きな人”」
だから、ためらっていたんだと思う。
映画デートを断られ、すっかり落ち込んでいた陽。
自分は嫌われたのかもしれないのに、“好きな人”として、天川さんを選ぶのは迷惑じゃないのか、と。
一緒に並んで走るのを嫌がられることが怖かったのかもしれない。
でも、“好きな人”として陽が誰を選ぶのかは陽の勝手だし、勝負事なんだから仕方ない。
何より1回断られたぐらいでへこたれるなんて、だらしない。
まだハッキリと振られたわけじゃないんだから。