「陽……?」


どうしたんだろう。
紙を開いているから、何を借りなきゃいけないかはわかっているはず。


それでも、一歩も足を動かさないどころか、陽の顔がどんどんひきつっていく。


応援席という、遠くから見ているあたしでもわかった。


〈3年2組の有明選手は、一体どうしたのでしょうかーっ!?〉


放送部による熱気のこもった実況。


もしかしたら、借りるのには少し難しいものなのかな……。


「有明くん、どうしたんだろうね?」


星奈もオロオロとしながら心配そうに陽を見つめる。


しばらくして、陽はきょろきょろと辺りを見回しはじめたかと思うと、ある場所を見てそのまま再び固まった。


陽が見つめていた先。


それが何なのかがわかってしまい、あたしはズキンと胸に何かが突き刺さる感覚を覚えた。