有明陽の恋愛の先生になると決めた、その日のお昼休み。
「さあ、どういうことか説明してもらおうか!」
お弁当の蓋を開くあたしに、星奈がずいっと顔を寄せてきて言った。
「何を?」
いただきますポーズのまま、あたしは何のことかと首を傾げる。
すると星奈は「とぼけるんじゃない!」と、あたしをお箸で差し示す。やめてくれ。
「有明くんとのこと!席替えで隣になって二日目にしてもう仲良くなったの?朔乃のこと、先生呼びしてるし、なんか二人でこそこそ話してるし、私に内緒で何楽しそうなことやってんのさ〜!」
「別に仲良くもないし、こそこそもしてないし、星奈に内緒にしてたわけでもないから」
目を爛々とさせて、早く話せと言わんばかりに向かい側から身を乗り出してくる。
それに対して、あたしは冷静に順番に否定していった。
「もしかして、昨日私が先に帰ったあと、何かあったの?」
「うん、まあね」
あたしは事の経緯をすべて話した。
「え……あの朔乃が、恋愛について教えるの?」
星奈は、目をぱちくりさせて聞き返す。当然の反応だ。
「有明くんは、朔乃は恋愛経験豊富なわけじゃなくて、ただ男にだらしないだけだって知らないのかしら?」
おいおい、随分とバッサリ言ってくれるではないか、星奈さん。