この学校の借り物競走は、人から物まで、ありとあらゆるものを借り、その借り物と共にゴールを目指す競技。
まず、ピストル音のあとに前転をして、10メートルほど先の、借り物が書かれた紙のところまで走る。
その紙に書かれた借り物は、グラウンド内で探す決まりで、借りる相手は生徒、先生、父兄、誰でもいいということになっている。
借り物を入手したあとは、決められたコースに戻り、残りの90メートルほどを走ればゴールだ。
「大丈夫かな、陽」
「“人”飲んでたし、大丈夫だよ!やればできる男だよ!」
応援席で見守ることしかできないあたしは、ただただ両手を合わせて祈るばかり。
そんなあたしに、隣の星奈がぽんぽんと背中を叩いて微笑んでくれた。
そうこうしているうちに、何人かのレースが終わり、いよいよ陽の番がやってきた。