陽の気持ちも自分と同じで、よくわかるから、だから陽と争うようなことはしたくない。
それでも、天川さんのことは譲れないから、あたしにそれとなく陽に天川さんを諦めさせるようにしてくれ。
大宙くんが、今日あたしのところにやって来たのは、そういうワケがあったからだった。
「……俺、一年生の時、有明と一緒のクラスで。地味だけど、いい奴だって知ってるから。傷つけたくねーんだ」
大宙くん……。
知ってるよ、陽のいいところなんて、数え切れないほどたくさん。
傷つけたくないっていう気持ちも、よくわかる。
でも、あたしがそのお願いを受け入れることはできない。
「ごめん、大宙くん。あたしにそれはできない」
あたしは、大宙くんの目をまっすぐに見据えて、はっきりと言った。
「だって、そんなの、陽には勝ち目がないって言ってるようなものだから」
応援すると決めたあたしが、“先生”であるあたしが、「陽は負けちゃうから今の内に諦めなさい」なんて。
そんなこと言えない。言っちゃいけない。