「陽ーーーっ!!」
駅に着くと、デートの予行演習で待ち合わせ時と同じ場所で、陽がひとりでたたずんでいた。
「……朔乃先生」
あたしに気付くと、陽がこっちを振り向いてか細い声をあげる。
陽は、あたしが見立てた通りの服を着ていて、前に見た時より一段とかっこいい。
それなのに、感想を伝える気にもなれないのは……。
「陽っ……びしょ濡れ!!」
陽が傘も差さずに、そこにいたから。
「へへ……折りたたみ傘、いつもなら持ってるんですけど、今日に限って忘れちゃって」
すぐに駆け寄り、陽を自分に傘に入れる。
苦笑する陽の頬を伝う雨粒のせいで、彼がまるで泣いているように見えて切なくなった。
「どうしたの?陽、何があったの?」
振られた、という意味はよくわからないけど、陽の隣に天川さんの姿はない。
「陽……?」
もう一度問いかけると、陽はやっぱり笑って、でも今までで一番弱々しい声で言った。
「断られたんです……。今日のデート」