あたしはすぐに陽に電話をかけた。


数回のコールのあと、電話が取られ、静かな声が電話口から聞こえてくる。


〈……もしもし〉


「陽?今メール見た。あれ、どういう意味?今、天川さんと一緒じゃないの?」


〈……〉


あたしの問いかけが届いているのかいないのかわからないけど、陽は何も答えない。


代わりに、ザーザーと雨の降る音だけが聞こえる。


「今……どこ?」


〈駅です……〉


「今から行くから、そこで待ってて!」


あたしは陽の返事を聞く前に電話を切ると、軽く準備をして家を飛び出した。


傘を片手に、パシャパシャと足元に水が跳ね上がるのも気にせず、走る。


「陽……何で……」


電話で耳にした陽の声は、今まで聞いたことのないぐらい暗い雰囲気をまとっていた。


教室ではみんなにうもれてしまって大人しいけど、あたしといる時はいつも明るかった陽。


それが、あんなにトーンの低い悲しそうな声を聞いたのは初めてだった。