「本番と同じ物観たほうがいいよね?あ、でも陽はそれだと同じの2回観ることになっちゃうけど」
「僕、映画大好きなので、気に入った物なら何回でも観れます」
それならいいか。
まだ付き合ってはいない相手とのデートで観る映画は慎重に選ぶべきだから、どんな作品か下見しておいたほうがいいと思う。
つまらないものだったら最悪だし。
そう思ったあたしだけど、上映スケジュールが書かれた看板を観て、思わず立ち止まる。
あたしが観たかった映画がまだ上映してる……!
陽と観る予定の物は、今絶賛上映中の洋画のSFアクション物。
で、あたしが観たかった物というのは、3ヶ月ほど前からロードショーされていた邦画の恋愛物。
なかなか映画館に行けないままで、もう上映終わっているかと思ってたのに、まだやってたんだ……。
「朔乃先生?チケット買いに行きますよ」
陽に声をかけられ、ハッと我に返る。
いけない、いけない。
今日は陽のデートの予行演習なんだから、あたしの観たい物は関係ない。
「何か他に観たい物でもあったんですか?」
「ううん!なんでもない!」
鋭い陽に悟られないように首をぶんぶんと横に振り、あたしはチケット売り場に走っていった。