「出来ましたよ、朔乃先生」


試着室から出て来た陽。


「……お、おお」


あたしは、思わずその見違えた姿に息を飲んだ。


爽やかでいて柔らかい生地の白いシャツに、グレーの薄手のベストを羽織り、下は長さがきちんと合っている細身の黒のボトムス。足元は、ハイカットの黒地に白のラインが入ったスニーカー。


モノトーンでまとめられたシンプルなコーディネートだけど、派手すぎず地味すぎない陽にぴったりの服だ。


「こ、こんな服着たことないですよ……。変じゃないですか?」


「あ、うん。これならいけるよ」


あたしのお墨付きをもらい、ホッとした様子の陽は、値段も手頃だったので即買いした。


「じゃあ、当日の服装はそれで決まりね」


「はい!見立ててくれてありがとうございます」


陽が嬉しそうに笑う。
これを期に、少しはオシャレに気を配ってくれるようになればいいんだけどね。


「そろそろお昼ですし、買い物に付き合ってくれたお礼にランチおごりますよ!」


「いいよ別に」


断ったものの、陽がどうしてもと言って聞かない。


「デートですから!」


必死でそう訴えられてしまっては、あたしも返す言葉が見つからない。


仕方なく、お言葉に甘えることにした。