そのあとは、お互いなんとなく緊張してしまって、会話を交わすことができなかつた。


あっという間に目的の駅につき、あたし達はショッピングモールへと向かった。


「あ、あのお店!安くてオシャレでいいと思うよ!」


とにかく、今は余計なことは考えないで、陽の服を探すことだけに集中しよう。


あたしは、メンズ服のお店に足を踏み入れ、店員さんに意見を聞きながら、陽に似合う服を選ぶ。


「世の中にはこんなにたくさんの種類の洋服が出回っているんですね……」


店内を見回す陽の率直な感想が面白くて、あたしは思わず笑ってしまった。


「このシャツなんかいいんじゃない?似合いそう」


夏らしい白いシャツを広げ、陽に見せる。


「……それは、学校の制服とどう違うんですか?」


「生地も細かいデザインも全然違うわよ!」


首を傾げる陽に、あたしは即座に突っ込む。


あたし達のそんな様子を見て、店員さんがクスクスと笑っていた。


「じゃあ、これとこれ、着てみて」


あたしが見立てた服を陽に渡して、試着室へと押し込む。


待っている間、店員さんがあたしに話しかけてきた。


「彼氏さん、きっと似合うと思いますよ」


その言葉に、悲しくなる。


あたし達は、カップルに見えなくもないんだ。
でも、違うから悲しい。


「ただの……クラスメイトですよ」


苦笑してそう答えるのが精一杯だった。


これが、本当のデートなら良かったのに……。