――ポスッ!
あろうことか、陽に抱きとめられる形で支えられた。
「……っ!!」
慌てて仰け反るように離れると同時にまた電車が動き出して、今度は後ろに倒れそうになる。
そんなあたしを、陽がまたあたしの腰を掴んで支えてくれた。
「大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫っ……」
陽が心配そうにあたしの顔を覗き込む。
みるみるうちに顔が熱くなるのを感じたけど、びっくりしすぎて固まってしまって動けない。
「あっ、すみません!」
ハッとした陽も顔を赤くして、あたしから手を離してくれた。
しばらくお互いの間に沈黙が流れる。
あたしを支えてくれた陽の腕の力強さを思い出して、ドキドキが収まらない。
なよなよとしていたイメージが強かったから、あんなふうに助けられてしまうとは思わなかった。
あんなふうに男らしいところを見せられてしまうと、かなわない恋だとわかっていてももっと好きになってしまう。
「あ、ありがと。助けてくれて……」
とりあえずお礼を言うと、
「朔乃先生に怪我がなくてよかったです」
なんて、まだ赤みの残る頬で笑顔を向けられる。
男らしいと思えば、またあどけなさを見せられ、あたしの鼓動は激しくなるばかり。
ずるいよ、陽。
どんどん好きになっちゃうじゃんか……。