振られるのは嫌だ。できればいい返事を聞きたいと思っているし、ほんのちょっとの希望に賭けている自分もいる。

でも、そんな確率は1%にも満たないってことは、ちゃんと分かっている。

それでも。無かったことにされるのはもっと嫌なんだ。

ふと、いつもと変わらない笑顔の日和さんを盗み見て、すげー不安になった。俺に悩んでくれてすらいないんだって、痛いほど思い知らされた。


「日和さん。もし負けたら、返事、聞かせてよ」

「……うん、分かってる」

「うん」

「燿くん」

「うん?」

「わたし、彼氏と別れようと思って」

「え?」


いま、なんて?


「こないだね。燿くんに好きって言ってもらってから、いっぱい考えたの。そしたら分かったの。……ううん、ほんとはもうずっと前から分かってたのかもしれない。でも、自分に言い訳して、もうダメになりかけているものをずるずる引き延ばしてた」

「……うん」

「あのとき、燿くんに真っ直ぐ見つめられて、もうごまかせないって思った。わたしは……わたしとそうくんはもう、そんな真剣な眼差しで見つめ合うことができないんだろうなって。ちょっとショックだったよ」


日和さんの長い睫毛が大きな瞳に伏せられた。口元は笑っているのにその表情はとても悲しげで、心の奥がぐちゃぐちゃにかき乱される。

日和さんにこんな顔をさせる彼氏が、とても羨ましくて、とてもとても、憎たらしくてたまらねーよ。