燿はすごいなって、また思った。
あいつはなにを思って日和に好きだって伝えたんだろう。日和に田代という彼氏がいることはきっと知っているはずなのに。
ダメで元々告白、なんて。あたしには死んでも無理だな。
なんだかやっぱり弟に置いてけぼり食らっているような気がして、またもやもやが広がった。
「……晶はなにを拗ねてんの」
ふと、先輩の優しい声が降ってくる。思わず顔を上げると、彼は困ったように眉を下げて、息を吐くように笑った。
「言っとくけど、機嫌わりーの全然隠せてねえかんな」
「べつに……機嫌、悪くないですし」
「んな顔しといて、ぜんっぜん説得力ねえよ? 晶もホント顔にでるのな。燿とそっくりで笑える」
それは昔からよく言われてきた。怒ったり、拗ねたり、とにかく不機嫌なときは同じ顔をしているって。話しかけんなってオーラも同じらしい。
全然うれしくねーよ。
姉弟だから同じような遺伝子情報が組み込まれているのは分かっているし、それはどうしようもないことだってことも分かっているけれど。それでもどうしたって、似ていると言われるたびに頭にくる。
燿が嫌いだからってわけじゃない。べつにあいつのこと、たぶんそんなに嫌いじゃない。
「似てないです」
「そりゃ当人たちには分かんねーもんだよ」
「絶対似てないし似たくもないっ」
ただ、どうせなら。あたしも、あいつの甘え上手な、かわいいところが欲しかったよ。
よりによって、口が悪いところとか、不機嫌な顔とか。どうしてそういうかわいくないところばかりが同じなんだよ。
本当に頭にくる。



