「――晶」
透き通る低い声に名前を呼ばれた。振り返ると、先輩が太陽の光を浴びて微笑んでいた。
吸い込まれそうだ。こんな優しい表情、誰もができるわけじゃないと思う。
思わず見とれていると、彼はそっとあたしの隣に並んだ。
「一緒に帰ろう」
「ほんとに試合見なくてよかったんですか? 燿ともほとんど話してないし……」
「いんだよ。見てるとやりたくてうずうずするしなー」
どうしてもかわいくできない自分に嫌気がさす。それでも先輩は笑って、またぐしゃっと髪を撫でたりして。
「……ほかの女の子にも」
「ん?」
「こういうこと……普通にしてるんですか」
「してねえよ」
「う、うそだっ」
「わはは、なんで嘘つかなきゃなんねーの」
こういうとき、かわいい女の子だったらどんな顔をするんだろう。なんて言えばいいんだろう。
……先輩はいったい、どんな女の子が好きなんですか。
いつも笑っているから全然分からない。先輩はいつだって、誰にだって優しいから、期待しそうになる気持ちをぐっとこらえるのにいっぱいいっぱいだ。
だってきっと、先輩があたしを好きになってくれる日なんて、絶対に来ない。



