でも、だからこそ。

燿がどこまでも甘えたやつだってことを知っているから、あたしには分かるんだよ。あいつがどれだけバスケが好きなのか、どれだけ本気でバスケをやっているのかって。


いったいどれくらいの時間が経ったのだろう。

大河くんが放ったボールがきれいな弧を描き、まるで吸い込まれるようにゴールが決まった。

それと同時に、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。


「――やったな!」


右側から先輩の嬉しそうな声が聞こえた。それと同時に左からも日和の嬉しそうな悲鳴が聞こえて、ああ勝ったんだと、現実に引き戻される。


「……晶?」

「え……」

「おっまえ……泣いてんの?」


先輩が目をまあるくして驚いている。日和も同じような顔をしていた。

ふと自分の頬に触れてみると、そこは温かく濡れていて、自分でも驚いた。

……いやいや。あたし、なに泣いてんの。よりによって燿なんかの試合で。


「もー、やっぱり晶は正真正銘、燿くんのお姉ちゃんだねえ」

「……うっさいな」

「かっこよかったね、燿くん!」


終わってみればスコアは76対68。いい試合だったんだな。うちの弟は76点のうち、何ポイント貢献できたのかな。

日和に頭を撫でられながらぼうっとコートを眺めていると、汗だくの燿と目が合って、あからさまにぎょっとされた。

最悪だ。燿に泣き顔を見られたのなんて何年ぶりだろう。いますぐ消えたい。いや、むしろあいつを消し去りたい。