勝手にチャンネルを替えやがったくせに、しばらくすると隣から気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。
まさかと思って左側に目線を移すと、案の定、でっかい身体がだらんとソファに身を預けていて。
……見事なまでに寝てやがる。
「ちょっと燿、寝るなら部屋行け」
身体を揺すってみても、耳元で声を掛けても、まるで反応なし。
「おい。邪魔だっつってんの」
「ん……」
こりゃダメだ。
眠ったまま、器用に身をよじって身体を伸ばすので、何故かあたしがソファから追いやられる形になってしまった。
「マジでぶっ飛ばすぞコラ」
「晶ー、そっとしといてやんなさいよ」
「はあ? あたしが先に座ってたんですけど」
「受験生なのにろくに勉強もしてない子がなに言ってんの。燿は毎日部活で疲れてんのよ」
お母さんは相変わらず燿に甘い。部活やってるのがそんなに偉いのかって。
「毛布掛けといてやんなさい」
「そんなのお母さんがしてよ。受験生はおとなしく勉強してきまーす」
「もー。本当にあんたたちは、仲が良いのか悪いのか分っかんないわね」
聞こえない振りをして、気持ちよさそうに眠る燿を見下ろす。
アホ面下げて、腹出したまま寝やがって。風邪でもひいたらどうするつもりだよ。大切な大会の最中じゃなかったの。
やっぱりあたしにとってこいつは、馬鹿で鬱陶しくて生意気な弟でしかないけれど。でもこれくらいじゃないと張り合いがないよなあと、頬をぎゅっとつねってやった。



