だらしないスウェット姿の燿が、テレビを眺めながら大きなあくびをした。黒縁めがねの向こう側の瞳が眠たそうにまばたきを繰り返す。
部活、がんばってんだな。
あたしには無いものだ。こんなへろへろになるまでがんばれるなにかを、こいつは早々に見つけて、実際、全国大会なんかも夢じゃなくって。
正直ちょっと羨ましいよ。この野郎。
「……今度さあ」
「んー」
「日和が試合見に行きたいって」
「えっ、マジで?」
広くなった肩がびくっと跳ねた。眠たそうにしていた瞳がぱちっと見開く。
「マジで。……だからせいぜい、かっこ悪いとこ見せないようにね」
「なあ、なんだよそれ。どういうことだよ? 俺がんばっていいの? 日和さんのこと好きでいいのかな」
「知らねーようるせーよ。あんたちょっと開き直ってるでしょ」
「だっていまさら恥もクソもねーじゃん。おまえだって、健悟さんのこと相当開き直ってんだろーが」
見てるこっちが恥ずかしいわ。
嬉しそうに顔を緩ませて、なあなあ、なんて、何回も訊いてきたりして。普段のすかした燿さんはどこに行ったのやら。
本当に日和のことが好きなんだって、いまさらながら実感する。
知らなかったよ。お姉ちゃんは、あんたがどれほど真剣に部活をしているのかも、もうずっと親友に恋をしていたことさえも、なにひとつ、知らなかった。
こんなにかわいい弟のことを、あたしは知ろうともしていなかったんだって、また情けない。
「いやー、もう俺いまなら死ねるわ」
「やっすい命だな」
「あ? うるせえよブス」
「……マジでいっぺん殴らせろ」
まちがえた。やっぱり全然かわいくなかった。



