うなだれるあたしをよそに、日和は美味しそうにもぐもぐ口を動かして、あっという間にごくんと飲み込んでしまう。


「ねえ、晶」

「なんだよ。シュウマイ返せよ馬鹿ぁ」

「えへへ、ごめんごめん。……ところで、お願いがあって。燿くんの試合見に行きたいんだけど……いっしょに行ってくれない?」

「えっ?」

「こないだ水谷先輩と見に行ったんでしょー? 邪魔はしないからわたしも連れてってほしいな。お願い!」

「べつにいいけど……」


燿の気持ちに応えるつもりがないのに、そんな期待させるようなことしちゃっていいのかな、なんて。思わなくもないんだけど。

でもそれは、ふたりの問題だ。


「……分かった。燿も喜ぶと思う」

「うん、ありがとう!」

「日和はかわいい顔して魔性の女だなー」

「もー違うよ。燿くんに『大会終わるまでは返事欲しくない』って言われたからさ。大切な大会なんだなって」


そういえば、燿の部活のことってあんまり知らないや。あいつがバスケを始めてからもう8年になるけど、試合だって数えるほどしか見たことがない。

だからこそ、こないだ試合を見て、大きくなりやがったんだなあと感動したわけなんだけど。


たしかに水谷先輩も言っていたかもしれない。大切な大会なんだって。

あとふたつ勝てば全国大会だとかなんとか。先輩とのデートに浮かれて、あいつの大会なんてどうでもよかったけれど、ちゃんと考えたらそれって結構すごいことなんじゃないの。


「もしかしてあいつ、真剣にバスケやってんのかな……」

「えー、いまさらなに言ってんの。お姉ちゃんのくせにぃ」


本当だよ。もしかしたらあたしって、燿のこと、なにも知らないのかもしれない。それってなんだかすごく情けない。