それでも日和は照れたように少し困り顔で笑うから、あまり燿のことをボロクソには言えなかった。
「燿くんのおかげで、そうくんのこととか、自分の将来のこと、ちゃんと考えることができたんだー」
「……あのさ、念のために訊くけど、まさか燿のこと」
「あーそれはない! 好きって言ってくれたこと、本当にうれしかったけど……燿くんはどうしても弟みたいなもんだからさー」
そうか。よかった。いや、燿的にはよくないんだろうけど。
弟と親友が付き合うことになったら、それはそれでちょっと居たたまれない。なんとなく。いや、だからといって付き合うなとは言えないわけですが。
「それに、わたしはやっぱりそうくんのこと……好きだし」
「うん」
「そんな中途半端な気持ちのまま、燿くんを傷つけるようなことはしたくないよ」
燿が日和を好きになった理由が、なんとなく分かった気がした。
日和は文句なしにかわいい女の子だと思う。顔もそうだけど、それだけじゃなくって。言葉遣いだってあたしみたいに汚くないし、ふとしたときの仕草や表情だって、女の子らしくて素敵だ。
でも、たぶん、それだけじゃないんだろうな。
優しさとか、あたたかさ。そういうものを惜しみなくだれかに分け与えることのできる子だから、燿も田代も、日和に惹かれたんだろう。
あたしだって同じだ。
「ちゃんと燿に返事してやってね」
「え? なんでわたしがまだ返事してないってこと知ってるの?」
「……あ。いや! 実はきのう、燿にぺろっと聞いちゃったんだよね……」
「そうなの? もーだったらそう言ってよー。ちょっと気ぃ遣っちゃったじゃん」
彼女はけらけらと笑って、ぱくっとあたしのシュウマイを口に含んだ。なんてこった! 楽しみに取っておいたのに!



