「……ていうか。来週から帰ってからでいいでしょ? 毎週ここまで来るの面倒なんだけど」


17にもなって真剣な顔で漫画雑誌を読み込む燿にそう告げると、その顔が物凄い勢いでこちらを向いた。眉間に深く皺を刻んで。


「は? 無理」


なんだとこの野郎。


「こっちだって無理なんだよ。なにが悲しくて朝っぱらからあんたの教室に来ないといけないの」

「はあ? ジャンプ3か月分って約束したの、おまえのほうじゃん」

「買うとは言ったけど持ってくるとは一言も言ってない」

「んなもん、買うのと持ってくるのはハッピーセットに決まってんだろーが」


全然ハッピーじゃねーよ。とんだアンハッピーセットだよ。


「あのな、俺の一週間はジャンプ無しに始まらねえんだよ」


いつもより半音低い声でそう言い放った弟は、雑誌を顔の横に添えて、得意げにふふんと鼻で笑う。


「……いや、ぜんっぜんキマってねーから」


今朝、一緒に朝食を摂っているときも、同じような台詞を言われた。

月曜はジャンプを読まないと一日を乗り切ることができないらしい。じゃあ火曜から金曜はどうしてんだって話だ。面倒なのであえて訊かなかったけれど。

それでも駄々をこねるので仕方なく持ってきてやったのに。なんだろう、この態度。


「勝手に月曜の朝から終わってろ。とにかく持ってこないからね」

「あーせっかく健悟さんとのこと協力してやろうと思ってんのになあ。おまえって弟不孝なんだなあ」

「くっ……」


いちいち水谷先輩をネタに持ってくるの、いい加減にしてほしい。そして同じくらい、なにも言い返せない自分もいい加減にしたい。