月曜の朝から早速後悔した。
2年生の教室はいつ来てもやっぱり好きじゃないなあ。
ガラ悪いのばっかりだし、うるさいし、チャラチャラしているし。こんなところでうちの弟が毎日生活しているのかと思うと、背中のあたりが少し寒くなる。
「おー、晶」
2年1組への道のりの途中。うしろから名前を呼ばれて振り向くと、朝練を終えたばかりの燿が、制服をきちんと着ないままで突っ立っていた。
こいつはまた、本当にだらしない。
「あんたさ、ネクタイくらいきちんと締められないの?」
「あっちーんだよ」
そう言いながら、わざとらしく襟をパタパタとさせて、弟はくちびるを尖らせる。かわいくない。
腰まで下がったズボンを見ながら大きなため息をついてやった。すると間髪入れずに「見てんじゃねーよ」という文句が飛んできた。
そして燿は不機嫌な顔を隠そうともしないまま、こちらにずいっと手を伸ばす。
「ジャンプ」
あたしはジャンプじゃねーよ。
心のなかでそう毒づきながら、コンビニの袋をがさがさと漁って。ずしっとした雑誌を手渡すと、弟は満足げに笑った。
「サンキュー」
燿はこういうところがある。どれだけ機嫌が悪くても、へこんでいても。食べ物や、大好きな漫画やらゲームやらを渡してやると、瞬時にすべてを忘れるらしい。
馬鹿なのか、切り替えが早いのか。まあどっちでもいいけれど、廊下の真ん中で突っ立ったままジャンプを熟読し始めるのはやめてほしい。