あのときも同じだった。
6年生にして初めて選手対抗リレーに出場することになってしまったと、晶がいつまでも鬱陶しくうじうじしていたから。怒ったんだ。うぜーな、もしかしたら1位かもしれねーだろって。
そしたらあいつ、「足の速い燿には分からないよ」って、めちゃくちゃキレてきやがった。こっちは応援してやろうと思ってんのにだぜ。
だったら、毎年当たり前のように選手対抗リレーに選ばれていた俺のプレッシャーが、おまえには分かってたのかよ?
たしかに俺に晶の気持ちは分からないかもしれない。
……でも。
「おまえだって……いつも俺の気持ちなんか分かってねーだろ」
勝手に失恋する気満々になりやがって。この俺がこんなに協力してやってんのに。
「そんなに失恋してえなら、健悟さんの前でもヤンキーみてーな喋り方すればいいし、スカートなんか穿かなきゃいいだろ。めんどくせえんだよ。うぜえんだよ。あーうっぜえ!」
「う……うぜえのはどっちだ! 一方的に喋りやがって!!」
「俺はちゃんと日和さんに好きだっつったぞ」
「うるせー!」
勢いだけでそう言い放った晶の顔が、次の瞬間、豆鉄砲を食らったような間抜けヅラに変わった。
「……は。あんた、いまなんて……?」
「だから。俺は日和さんに玉砕覚悟で告白したぞって」
「なに? 日和? え……ちょっと待って、燿って日和のこと好きなの?」
「だから告ったっつってんだろうが」
「い……いつから!?」
「はじめて会ったときから。詮索うぜえ」
晶には死んでも言わないでおこうと決めていたのに。それこそ絶対に振られるんだ。それが姉貴の友達にだなんて、あまりにもかっこ悪すぎる。