「おまえな。そんなこと言ってっと、あれだぞ。結婚できねーぞ。死ぬまで処女だぞ」
「しょっ……!?」
晶は、圧倒的に強いし、口も脚癖も悪いし、頭もわけ分かんねーほど良いけれど。
たったこれだけで顔を真っ赤にして右ストレートをぶちこんでくるんだから、人ってのは見かけによらねーなあと思うわけだ。
「……あたしは、燿とは違うから」
「なにがだよ」
「あたしはね、あんたみたいにテキトーにホイホイ色んなひとと付き合ったりできるほど、器用でも、スレてもないんだよ」
言ってくれる。俺がこの5年間、どんな想いを抱えてきたのかも知らねえで。
俺だって、自分なりに悩んで、自分なりに選択しながら生きてんだ。好き勝手言ってんじゃねーよ。ふざけんな。
「バッカじゃねーの。玉砕が怖くて告白もできねーようなやつにとやかく言われたくねーよ」
「あんたにあたしの気持ちなんか分かんないよ」
「ぜんっぜん分かんねーな。分かりたくもねえ」
人通りの少ない道でよかった。高校生にもなって、外でこんなに派手な姉弟喧嘩をすることになるなんて思わなかった。
分かる。晶が本気で怒っているのか、そうじゃないのかなんて。17年もこいつの弟をやってきたんだ。当然だ。
そしてたぶん、晶も分かっている。
これがいつもの言い合いなんかじゃなくて、結構な本気バトルだってこと。
「……少なくとも俺は、おまえなんかよりぜってー行動してるよ」
苛々する。晶にこんなに腹が立ったのは、小学5年の運動会以来だ。