当然のように全員分を払ってくれた健悟さんに挨拶をして、俺と晶はふたりで家路をたどった。
そういや、ふたりで帰るのっていつ以来だろう。小学校低学年ぶりくらいかな。
隣で歩く女は、ふてぶてしいくせに歩幅が小さくて、重ねた月日を妙に体感した。
あんなに大きかったはずの姉が、いつの間に。
……違うか。俺が大きくなったのか。それでも俺はまだこいつのサンドバッグなんだもんなあ。嫌になる。
「……そのスカート」
「あん?」
「ざわざわ買ったのかよ?」
ちらりと斜め下を盗み見ると、晶は分かり易く目を泳がせていて、とても面白い。図星かよ。
「う、うるせー」
「べつになんも言ってねーじゃん」
「顔が! 目が! あんたのすべてが! 全力で笑ってんだろ!」
どすん、と。結構重い音がした。
スカートを穿いているはずの姉貴が、後ろから俺の脚に蹴りを入れてくるんだからびっくりする。すぐ脚を出すのは本当にどうかと思う。
「いてーよ。そんなだと健悟さんに振られるからな」
「べつにそんなの最初から分かってるよ」
「……はい?」
まさか。晶って、健悟さんに対して全然自信ねーのか?
「おまえ……告白しねーつもりかよ?」
「当たり前じゃん。なんでわざわざ失恋するためにしなきゃいけないんだよ」
なんだって。なんてこった。いや、べつに俺の知ったことじゃないんだが。
これはちょっと黙っておけねーよ。