一瞬だけ広がった静寂を破ったのは、健悟さんのほうだった。


「……まあ、晶は高校生だし、いまは受験で大変な時期だしな」

「それ全然答えになってないっすよ」

「はは、ばれた?」

「はぐらかさないでください」


健悟さんはモテる。少なくとも中学時代はモテていた。俺の女友達でも、健悟さんに憧れているやつは少なくなかったし。

そりゃ、こんなに優しければな。俺が女だったら絶対好きだったよ。このひとは勘違いさせる天才だ。罪な男だ。


でも、だからこそ。

はっきりさせたいって思うんだよ。晶を好きなのか、そうじゃないのか。

そう思う理由は分からないけれど。


……やっぱり俺、シスコンなのかな。


「晶のことはかわいいやつだなーと思ってるよ」

「女として? 後輩として?」

「なんだよ、いつもはすかしてるくせにすげー突っ込んでくるなあ」


べつにすかしてねーし。

答えず、黙って一口お茶を飲むと、健悟さんは諦めたように息を吐いた。そして遠慮がちに口を開いた。


「2年ぶりに会った晶は、びっくりするほどきれいになってて、ちょっと焦った。ってのが正直なところで。でも、だからってわけじゃなくてさ。中身はなんにも変わってない、純粋でブラコンな晶だったのが、卑怯だよな」

「……つまり、女として、と」


あとあいつはブラコンじゃないっすよ。


「あはは! まあ、うん。そう……かな。弟のおまえにこんなこと言うのめちゃくちゃ恥ずかしいな」


先に断っておくが、俺は決してゲイではない。そこは心得ていてほしい。

でも、正直あいつが羨ましくて仕方なかった。健悟さんにこんな顔をさせる晶に、内心すっげー嫉妬した。

何度だって言うが、俺はゲイではない。