勝手にチャンネル替えんなよ。


食べ終わった晶がトイレに立ったので、少しのあいだ、健悟さんと俺のふたりがテーブルに残った。

やっぱり男前だよなあ、なんて、男の俺に思わせる健悟さんはすごいと思う。温かいお茶の湯気の向こう。左手の人差指をこめかみに添えている彼に、思わず見とれてしまった。


「……ぶは。燿、すげー見てくるじゃん」

「えっ」

「こえーよ。俺と晶が仲良くしてたからヤキモチ妬いてんだろ。シスコンもここまで重症だと困るなー」

「ち、違うっすよ! シスコンじゃねーし!」

「わはは、冗談な」


どうしてこんなにも優しい顔ができるのだろう。

このひとは出会ったころから、だれにでも分け隔てなく、優しさを与えられるひとだった。

べつに俺が特別かわいがられていたわけじゃないんだ。俺が特別なついていたから、健悟さんもそれに応えてくれているだけで。


「……この際だから訊きますけど。健悟さんはぶっちゃけ、晶のこと好きなんすか」

「――ゲホッ」


しまった。お茶を飲んでいるときに訊くべきことじゃなかったかもしれない。

健悟さんはゲホゲホと咳込んで、落ち着くと、呆れた顔で笑った。


「おっまえ……ド直球だな」

「回りくどいのは好きじゃないっす」

「おう、そうか」


健悟さんは笑いながら、眉を下げて困った顔をする。目の前に座る男を圧倒的な大人に感じてしまった。たった2歳しか変わらないのに。