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「試合、見に来てくれてありがとうございました」


温かいほうじ茶を一口飲んでそう言うと、目の前のきれいな顔が嬉しそうに笑った。健悟さんの笑顔は中学時代から変わらないなあと思った。


「おっまえ、大活躍だったなー。昔からセンスの塊だとは思ってたけど、久々に見てびっくりしたわ」

「んなことないっすよ」


メシに行く約束をしていた日曜日。午前中にあった試合を、健悟さんと晶が見に来てくれた。

晶がめずらしくスカートを穿いていたのは面白かったけれど、蹴りを入れられるのは嫌なので何でもない顔をしておいた。

つかスカート持ってたのかよ。わざわざ買ったんだったら最高に笑える。


「入部してきたころはダントツでチビだったのになー」

「中学のころの話でしょ。いまはもうちょい大きいっすよ」


まあ、いまだってバスケットマンにしては小さいと思うけれど。せめてあと3センチ伸びてくれたらなあ。


ふと、健悟さんの隣に座っている晶に目を向けると、ばちっと目が合ってしまった。そしたら思いきり足を踏まれた。あまりにも理不尽で不条理だ。だって俺、なんも言ってねえだろ。

いますぐ健悟さんにテーブルの下を覗いていただきたい。


「お待たせいたしました~」


晶とガンを飛ばし合っていると、頼んでいた料理が運ばれてきた。美味しそうな海鮮丼に、俺たち姉弟は馬鹿みたいに目を輝かせて。

それでなくても試合で疲れて腹が減ってたんだ。


「いただきますっ」


イクラはいつ食っても美味い。