史上最高に晶が邪魔だ。あいつさえ俺の姉貴じゃなければ、俺はこのひとに、もっとちゃんと男として見てもらえたのかもしれない。

……でもたぶん、そういうんじゃない。


「じゃあ別れればいいじゃん」

「えー?」

「日和さんのこと理解してくれないやつとなんか、別れればいい。無理して付き合うなんて意味わかんねー」


子どもみたいだって、自分でも思うよ。

日和さんの気持ちとか、彼氏の気持ちとか。そんなのは正直どうでもよくて、ただ俺が、ふたりに別れてほしいだけだ。


沈黙が落ちる。すぐ傍にあるはずの賑やかな駅が、まるで別の世界みたいに遠ざかった気がした。


「……うん、そうだよね」


少しの静寂のあと、また笑った。そんな彼女にどうしようもなく苛々して、右手に収まっているコーラをグッと喉に流し込んだ。口のなかがいてえ。


「燿くんは白黒はっきりしててかっこいいなー。そういうところホント晶と似てて、参っちゃう」


また晶かよ。いちいち比べんな。

いま口を開けば、きっと彼女を傷つけるような言葉しか出てこない。だから黙っていた。俺のコーラはみるみるうちに減っていくのに、彼女のオレンジジュースは一向に減る気配がなくて、嫌になる。

このひとはいったい、どこまで分かって、俺にこんな態度を取っているんだろう。