コンビニで恒例の買い食いをしたあと、いつも大河とはそこで別れる。大河は比較的近所に住んでいるのでチャリで帰り、俺は電車通学なのでそのまま駅へ向かう。
ただ、きょうはなんとなく遠回りをしたかった。いい気分のまま、誰もいない夜道を歩きたかった。
いつもは歩かない道でまさか日和さんと会うなんて、想像すらしていなかったに決まっている。
「……あれ」
本当にひとけのない、淋しい道だった。こんなところで女の子がひとり立っているほうが不自然なくらいだ。
ちなみに、そんな暗闇でなぜ日和さんだと見分けられたのかという疑問は、ぜひとも俺のしつこい恋心にぶつけてやってほしい。
「日和さん?」
考えるよりも先に思わず声を掛けると、彼女の細い肩がびくっと跳ねた。
「燿くん……?」
「こんなとこでなにしてんの?」
「ちょ、ちょっと近道だよー! それよりもこんな時間まで部活なんて偉いね! わたし帰宅部だから感心しちゃうなー」
突っ込みどころが多すぎて追いつかない。この道は全然どこにも近道じゃねーし、帰宅部で、しかも受験生の日和さんがこんな時間にこんな場所にいるなんてのは、どう考えてもおかしいし。
嫌な感じがした。なんとなく、日和さんはここで泣いていたんじゃないかって思った。暗くて顔はよく見えないけれど、鼻声だし。
だって、俺は知っている。最近日和さんがイケメン爽やか彼氏と上手くいっていないことを。
日和さんの彼氏なんつー羨ましすぎる立場のくせに、こうやって彼女を泣かせるそいつに無性に腹が立って、さっきまでのいい気分なんか一瞬で吹っ飛んだ。
いや、本当に彼氏に泣かされているのかは知らねーけど。こんなのただの嫉妬だ。