大河がまるで息を吐くようにシュートを放った。チーム一のシューターが放つそれは、きれいな弧を空に描いて、そのまま静かに地面に消えていった。
「なんつーかなあ。努力を隠すのが上手いっつーか……おまえって普段すかした顔してっけどさ、ほんとはすっげーがんばってんじゃん。こうやって毎日居残って練習してたり」
「ぶは。べつにすかしてねーし」
「燿が実はめちゃくちゃバスケ好きなこと、おれらは知ってるからさ」
なに語ってんだよって。さみーこと言ってんじゃねーよって。
本当はそう笑ってやりたいのに、くちびるが震えて、上手く言葉になってくれない。
「おまえがあの試合を引きずってんのも、ちゃんと知ってる。必要ない責任を感じてんのも分かってる。はじめから頭ひとつ抜けてたし、バスケのセンスもあるし、こうやって努力もしてるし。誰から見てもおまえは申し分ないうちのエースだけど、ひとりでがんばんなよ」
「……おう」
「一緒に行くんだからな、ウィンターカップ」
「……おう」
普段は馬鹿みてーなことばっかり言っているくせに、これだから馬鹿は。
ド天然で、素直すぎて。ちょっと掴みどころのないやつだけど、やっぱり大河はうちのキャプテンだ。
「あ~! 腹減った!」
こっちが感動しているのをよそに、へらりとした顔に戻るのとか。やっぱりよく分からないやつではあるが、なんとなく、こいつとなら、こいつが引っ張るチームでなら、本気で行けるような気がしてきた。ウィンターカップ。
俺はたぶん、大河が思うより、自分で思うより、ずっとずっと、バスケが好きなんだろうと思う。