ベンチには大河やほかの1、2年生もいたけれど、よりによって、その試合に出ていた下級生は俺だけだった。
自分で言うのも何だが、当日の調子は良かったと思う。だから試合終了間際、最後に回ってきたボールも、絶対に決められると思ったんだ。
決まっていたら3点。同点で、フリースローに持ち込むことができた。
そしたらなにか変わっていたかもしれない。未だに、時々そんなことを考えては、ちょっと沈む。誰にも言わねえけど。
ただ、それよりもずっと、俺を責めなかった先輩たちの優しさのほうがつらかった。そんな状況で泣けるわけがなかった。俺なんかが泣いていいわけがなかった。
だから、あの瞬間から決めている。ウィンターカップには絶対に行くって。試合終了のホイッスルの瞬間から、そう決めている。
先輩たちの想いを背負うとか、そんなのは俺にはちょっと重すぎるけれど。誰のためでもない、これは、俺自身の決意であり、夢だ。
「なー。入部したときのこと喋っていい?」
大河が突然おかしなことを言い出すので、シュートが外れてしまった。シュートの姿勢に入ったタイミングで話しかけるの、いい加減やめてほしい。
「燿はさー、最初っから頭ひとつ抜けてたじゃん? それはたぶんおまえが生まれ持った才能でさ、他のやつが嫉妬してもどうしようもねーことなんだろうけどさ」
「……おう?」
なんの話だ? 首をかしげたまま大河のほうに顔を向けると、思ったよりも真剣な顔をしているもんだから、なにも言わず、そのまま前を向いた。
ゴール下に転がっているボールを改めて眺めて、なんだかどうしようもない気持ちになる。