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ウィンターカップの予選が始まった。3年生の先輩はインターハイの予選で引退したから、実質いまは俺たちがチームの主力だ。

べつに物凄い強豪校っていうわけじゃない。うちの学校は部活の実績よりも進学率を売りにしていると思うし、俺も部活がやりたくてこの高校に来たんじゃない。


「インハイはさ、惜しいところで負けちゃったじゃん? だからウィンターカップは絶対に行こうな」


それでも、チームメイトにこんな台詞を言われると、さすがに背筋がぴりっとする。


「……なんだよ、改まって」

「いやー、だってすっげー悔しかったもんなー、おれ」


台詞とは裏腹にへらりと笑った大河に、俺もつられて笑う。


「先輩ちょー泣いてるしさ、どうしようかと思ったよ」

「まあな」

「とか言って、おまえ涼しい顔してただろー」

「んなことねーって。つか、べつに自分の引退じゃねーし、泣かねーよ」

「でもさー、燿だって試合出てたじゃん?」


きっと一生忘れないと思う。スコア101対98の試合。相手は県内で1、2を争う強豪校だった。

大敗したわけじゃない。むしろいい試合だった。先輩たちは強かったし、たぶん誰もが、心のどこかで勝ちを信じていた。

それでも100点ゲーム。負けは、負けだ。


「……いやいやマジで、悔しかったっつの」


悔しかったに決まってんだろう。簡単に泣けないくらいには。